思いつき

我ながら、とてもくだらない小話を思いついてしまった。
しかし、折角思いついた物語をこのまま忘却のかなたに葬り去るのももったいないので、
なんとなく日記のネタに残そうと思う。
時間を無駄にしたいと思う人だけ続きを読むと良い。



男は、人並み外れた先見の目を持つと言う噂を持つ老人の家を訪ねていた。
男は、自信が所属する国の将軍に命ぜられ、戦争を老人の力を用いて勝利を確実にするために、
彼の協力を求め、このように辺鄙な山奥まで足を運んでいた。
老人の小姓と見られる坊主に促され、屋敷の奥の部屋に招かれた男。
10分と待たない内に、部屋の入り口から一人の老人が姿を見せた。



男は、事情を説明すべく、慌しく立ち上がり老人へ話を始めようとするも、
老人は男を静かに制止し、一言だけ語りかけた。
「貴方は私に死を見せるものですか?」
男は、老人のあまりに虚を付いた問いに口を開いたまま、言葉を失ってしまった。
「貴方は見たところ、戦事に関係のあるご身分とお見受けする。
さしずめ、私の力を用いて戦乱の推進力とすべく、ここへ来たと言うところでありましょう。」
流石は先見。
こちらの説明など不要とばかりに、言葉をつなぐ。
しかし、それならば死を見せるものと言うのはどういうことなのか。
おそらく、その疑問が顔に出たのであろう。
老人は言葉をつなげる。
「貴方の誘いに乗り、戦地へと赴けば、戦争には勝利します。
しかし、その後、私は名誉を欲した邪なお味方の手にかかり、命を落とす事となります。
貴方の誘いを断れば、自己の勢の力とならぬのならば今ここでその命を散らすのが
良策と勝手な理由で私の命を奪うでしょう。」



男はその返答に、いくつかの弁解を用いて勧誘を試みるが、
未来が見えていると言う男が相手では、その結果を捻じ曲げるほどのうまい言葉が繋がらない。
3時間にわたる問答も、交渉をうまく進めることかなわず。
やむを得ず、その腰に備えた刀に手を伸ばし、老人を見据える。
自己の未来が見えていると語る老人は、
その結果さえ知っていると言った顔で、真っ直ぐに男を見つめ返している。
「自国の力となりえぬものならば、他国の手に落ち脅威に変わる前に、
貴方の命を奪わなければなりません。お考えを改めていただけませんか。」
男の最後の言葉に、老人が答える
「なれば、最期に貴方の国が戦に勝利する方法を貴方にお伝えしましょう。」
男の体がピクリとゆれ、その動きを止める。
老人は、紙と筆を用いて、腰の剣に手を伸ばしている男に、一連の策を説明する。
「貴方は国に戻り、主君には協力を拒んだワシを殺したと話し、
今説明したことを自己の考えた策として実行されよ。
戦には勝利し、貴方は地位と名誉を得るでしょう。」
「死を前にすれば、先見ともあろう方でもよくおしゃべりになるのですね。」
男は、刀を抜き、高々と老人の頭上に振りかざす。
「ただ・・・」
紙から視線を男に移した老人の目には、深い淀みが見え、男は再びその動きを止めてしまう。
「ただ・・・?ただ、何だというのだ。」
「ただ、貴方はこの功績を得たすぐ後に、ひとつの大きな問題を抱えることとなります。」
「ならば、その問題への対策も教えてもらおうか。」
「それを答えれば貴方はその刀を振り下ろすでしょう。」
「言わずとも、斬る。それくらいは先見ならずとも予想できように」
「私は答えません。貴方は私を殺しません。」
「・・・なに?」
「貴方はこの戦に勝利し、新たな問題に悩む。
その時、また私から策を受け取り、その問題を解決する。
貴方は私を殺せない。」
「その問題を貴殿に頼ることなく、対応した場合はどうなる。」
「その未来は見えぬ。すなわち、その未来に行き着く可能性はない」
動揺も、抑揚も無く言葉をつなぐ老人に、
男は恨めしい顔を向けて、刀を鞘に戻す。



男は紙を手に、君主の元へと帰っていった。
屋敷の門前にて、老人と小僧がともに帰路を進む男を見ながら話しだす。
「師匠、あれでは戦に加担した事になりませんか?」
「この先見は己の未来しかみえんのは知っておるじゃろう
ワシには、後日、おまえと五体満足でシシャモをくわえながら、
あの戦であやつの国が勝った話を、毛ほどの興味も無く聞き流した像がみえたのじゃよ。」
老人は先見としての態度から、すっかりいたずら好きのおじいさんのそれになっていた。
老人は、屋敷に戻り小僧に早く晩飯の催促を始めた。



後日、大きな戦があった。
男の所属した国が勝ったという話である。
敵国の強烈な防衛に対し、将軍の奇策がとても効率的に決まり、
大勝利を収めたと言う噂で、町はにぎわっていた。
あの後男は国に戻り、老人に言われたとおり策を将軍に話し実行、勝利を収めた。
しかし、名誉を欲した邪な将軍の手にかかり、命を落としたといいます。


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お後がよろしいようで。
なんか、書き終わってから見直してみるとどうにも、
構成が未来日記っぽくなりましたね。



いや、ストーリーの構成はよくある話ではあるんですけど、
有名作がひとつ表にバッとでてしまうと、やれパクリだ、やれ模造品だといわれる昨今の製作事情。
ほんとに、なんとなく思いついたから、書き残したのであって
未来日記は頭に無かったんですよ。ほんとにー。